音楽を作り、お酒を造る。

「命」を吹き込むライフ・スタイル。

音楽活動と併行して日本酒造りライフワークとしているアーティスト、かの香織さん。 日本酒造りに挑む想い、そして[ビルボードライブ]でしか飲むことのできない日本酒 「Over The Rainbow ～虹のかなたに～」誕生のストーリーを語っていただきました。


「命」に出会った酒造りの現場

　私は、音楽を作る活動と併行して、2002年に実家の酒蔵、宮城県の「桂泉醸造元はさまや酒造店」でお酒造りを始めました。創業が1757年（宝暦7年）の小さな造り酒屋です。
　そこで生まれたので、夏場は蔵で醸造ごっこをしたり（笑）、日本酒は本当に身近なものだったんですけれど、若い頃は、その純日本的な家の環境がちょっとイヤになって、音楽の世界に飛び出したところもあるんです。
　でも、お酒を飲むようになった頃からワインやビールといった醸造酒が好きだということに気づいて、たぶんDNAの力も手伝って、日本酒に興味が湧くようになったんですね。音楽も、今でもジャンルに関係なく世界中の音楽を聴きますけれど、その中で、雅楽や三味線の音に耳が行くようになってきました。日本の音楽の微細な音の揺れや、日本酒のデリケートな味、大人になってそうゆうことがわかってきたんですね。
　お酒造りを始めてみたら、現場にいないと分からないことがたくさんあるんです。まず、気づいたのは、そこに「命」があるということ。お酒がどんどん発酵していく、実際には微生物が何億と誕生しているわけですけれど、まさに「命」や「魂」に向き合っている。造れば造るほど、その「命」が迫ってくる。それはもう「ありがたい」って思い始めるんですよ。酒蔵自体が、世界を張られているような空気の清らかさもあるし、まさに心の学びの場所になりましたね。
　面白かったのは、お酒を造る杜氏さんなんかと話をしていると、ミュージシャンっぽい感覚的な会話が成立するんですよ。ある人が、「（このお酒は）味にチェロのような低音が入っているでしょ？」って言うんです。飲んでみたら、確かに味の幅の中にずーんと低音のようなものが流れている。音楽もお酒も、抽象的なものを具体化していくという意味で「もの作り」なんだって、その時から思うようになりました。

酒ひとくちにお水をふたくち 　


　最近は、いろいろな蔵元さんが、ワインと同じように食中酒として愉しんでもらうためのアプローチを始めていますが、私はその中でも洋食と合う日本酒を意識しています。例えばチーズと合う日本酒とか。和食だけではなく、いつもの食卓のお料理に合わせてもらいたいなって思うんです。そこは酒蔵の娘ですから、崩してはいけないところは崩さずに、私らしい、かの香織だからできることをしたいと思ってます。
　日本酒は、中には飲み過ぎて失敗した方もいらっしゃると思いますが（笑）、ぜひ「和らぎ水」との組み合わせをオススメします。仕込み水や湧き水がいいんですが、ミネラル・ウォーターでもOKです。お酒ひとくちに、そのお水をふたくち飲む。そうすると、15度くらいだった度数が、5度くらいまで下がります。しかも「純米」と書いてあれば、基本的にお酒とお水しか使っていない、カラダに優しいお酒なんですね。飲み過ぎさえしなければ、お米でできている日本酒は、お米の食文化で生きてきた人たちには、優しいこみ込み方をするはずですから。

震災、そして、虹のかなたに 　 　

　いま、[ビルボードライブ東京]で愉しんでいただいている「Over The Rainbow」は、昨年の2月、震災前に造ったお酒です。私の実家も被災しましたが、このお酒は幸いに造り立てで熟成をかけるために冷蔵庫にぎっしり入っていて、そのおかげで無事にお届けすることができました。
　その震災後、東北の子供たちを支援するプロジェクトを立ち上げて、支援を集めるためにハワイで歌ったんですね。その時に、幼い頃に歌うことを好きになったきっかけの曲「Over The Rainbow」を歌いました。しかも、和の心を伝えたいと思って、美空ひばりさんが歌った日本語ヴァージョンで。その時の地元の支援者の方との交流から、被災した子供たちをハワイに連れていくというプロジェクトも誕生しています。そしてハワイのクルマのナンバー・プレートには虹が描かれていました。
　そんないろいろなことが繋がって、日本的に言えば「縁」「縁起」となって、震災後の私の中で「虹の架け橋」がテーマになってきました。Over The Rainbow～虹のかなたに」は、そんないろいろな思いが詰まったお酒でもあります。 　ぜひ、素敵な音楽と美味しいお料理と一緒に愉しんでください。

かのかおり：80年代にショコラータのメンバーとしてデビュー。1991年に『fine』でソロ・デビュー。以来、シンガー・ソングライターとしての自身の作品のリリースはもちろん、数々のアーティストへの楽曲提供、プロデュース活動を続けている。2002年に実家である「桂泉醸造元はさまや酒造店」で酒造りを開始。また、宮城出身のアーティストと共に震災支援団体「みやぎびっきの会」を立ち上げて活動中。2月25日には仙台サンプラザホールでのチャリテキーコンサート「Dream Chain Vol.6 ～子ども達に夢を～」に参加する。

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