ビルボードライブスタイル

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今号の5周年記念対談は、ファンキー・スタイル。唯一無二の歌声を聴かせるヴォーカリスト、鈴木雅之さん。そして、プロデューサー/作詞家として活躍、ブラック・ミュージックに関する博識でも知られる松尾潔さん。SOUL/R&B系のアーティストを中心に何度も足を運んでくれている二人が[ビルボードライブ東京]を語ってくれました。


六本木を巡る不思議な縁

松尾:[ビルボードライブ]も5周年ということですが、ちょうどここがオープンする少し前、鈴木さんの『Champagne Royale』というアルバムのプロデュースを担当させてもらっていて、その中の「53F」という曲は、ミッドタウンのザ・リッツ・カールトン東京のスウィートルームが53階にあることからタイトルを付けたというエピソードがあるんですよね。その同じ場所に[ビルボードライブ東京]があるのも何かの縁ですね。

鈴木:そう、ここミッドタウンは、伝説のソウル・バー「ジョージス」があった場所だしね。俺は去年2月に[ビルボードライブ]でファンクラブイベントを開かせてもらっているしね。その時にマッキー(槇原敬之)が作ってくれた新曲「THE CODE〜暗号〜」を彼のピアノ伴奏で披露したんだけど、その直後に震災があって、その曲のリリースを一年延ばしたっていう経緯もあって……。そういう意味でも忘れられない場所になったね。

松尾:その流れの中でリリースしたアルバム『DISCOVER JAPAN』が「輝く!日本レコード大賞」で優秀アルバム賞を受賞された。その会場でも鈴木さんとお会いしましたよね。

鈴木:そう。何故か、我々には[ビルボードライブ]を巡る、ちょっと不思議な縁があるんだよね。

松尾:僕はもう100回以上足を運んでいるんですが(笑)、鈴木さんは、[ビルボードライブ]で印象に残っているのは誰ですか?

鈴木:いろいろあるんだけど、まずは、マンハッタンズ。実は、シャネルズでデビューしたときに彼らと対談したり、お互いのライブにゲスト出演して歌ったこともあるんだ。それ以来会ってなかったんだけど、[ビルボードライブ]の楽屋に挨拶に行ったんだよ。そうしたら「あの時のドゥワップ・キッズか!」って覚えていてくれて(笑)。しかも、メンバーのブルー・ ラベットに「お前はずーっと歌い続けろ。歌い続けることが自分のパワーになるから」って背中を叩かれたんだよね。出会いから30年以上経ってもまだ彼らは現役で歌っていて、そんな人にこれからのレールを敷かれたような気がして。最高の思い出だね。

松尾:僕も初来日のときに観たアーティストが、その後ビッグネームになって、今また、こういう手が届く距離で歌ってくれるっていうのは感慨深いものがありますね。[ビルボードライブ]にはラグジュアリーな感じがあるから、小さいライブハウスという印象ではなく、逆にホールやアリーナで観るのとはまったく違う贅沢さを感じさせてくれますよね。 。

人間味を感じる距離感

鈴木:食事しながらそのアーティストの話に花を咲かせて、そのあとにライブを観られるのもいいよね。そういう大人の遊び、大人の時間の過ごし方みたいなものが[ビルボードライブ]によって定着してきたような気がするな。

松尾:僕は、3階席のちょうどアーティストが出入りするドアの近くに座ることが多いんですが、ショーが終わったアーティストのちょっとホッとした顔を見るのが好きなんです。ステージとの距離が近いし、歌い手の人となりが見える感じがありますよね。

鈴木:特にブラック・ミュージックのアーティストは、演出や仕掛けと関係なしに「声一発で聴かせます」っていうところがあるからね。顔の表情がわかる、こういう距離感で観るライブが好きだね。人間味が伝わってくるから。

松尾:僕は、自分より歳の若いアーティストとコミュニケーションを深めたいときに来ることも多いですね。例えば、JUJUとジャズ・アルバムを制作する前にマリーナ・ショウを一緒に観に来たんですが、僕が「マリーナ・ショウ的なもの」を話して説明するよりも、一緒に観た方が話が早い。音楽的に勉強になりましたし、名盤といわれた一枚をずっと歌い続けていくことの美しさにも気づかされました。

鈴木:リスペクトしている、いわば自分にとってのアイドルのような海外アーティストが来て、彼らのステージングやパフォーマンスから活力をもらったり、いろんなことをまだまだ吸収させてもらえる。[ビルボードライブ]はそんな場所だよね。40代、50代の大人たちが客席で踊ってるのを見てると「この人、昔、このアーティストが好きだったんだろうなぁ」ってつくづく思う。そういうお客さんの姿を見ると温かい気持ちになるし、同志みたいな気持ちになれるのも[ビルボードライブ]ならではだよ。

松尾:初めて会うのに同窓会みたいな(笑)。音楽ってひとつの言語みたいなもので、その音楽が好きな者同士は同じ言葉を喋る者みたいな感じがありますよね。

鈴木:そういう意味でも、ミネアポリス・ファンク好きの俺としては、ジャム&ルイスも全員いる状態のザ・タイムを[ビルボードライブ]で観てみたいね。

松尾:鈴木さんは最近キヨサクさんとコラボレーションされましたけど、[ビルボードライブ]だけでのコラボとか、そういうスペシャル感のあるものも期待しますよね。それで言うと、僕は、ニュー・エディションのメンバーが全員揃ったライブを観てみたい。もう日本では観られないだろうと思っていたアーティストをどんどん登場させてくれるから、ついつい期待が膨らんじゃうんですよね。

MASAYUKI  MARTIN  SUZUKI
すずきまさゆき:グループでのデビューからは32年、ソロ・デビューからは25年を越えて活躍を続けるヴォーカリスト。昨年は、日本の名曲を歌ったカヴァー・アルバム『DISCOVER JAPAN』をリリース。2012年はコラボレーション・シングルとして槇原敬之による「THE CODE 〜暗号〜」に続いて、MONGOL800のキヨサクと組んだ「Endless love, Eternal love」を7月にリリースした。

KIYOSHI  KC MATSUO
まつおきよし:音楽プロデューサー/作詞家。早稲田大在学中より音楽ライターとして活動。国内外の取材経験多数。久保田利伸との交流をきっかけに音楽制作に携わり、平井堅、CHEMISTRY、東方神起、JUJU等を大ブレイクに導く。2008年、作詞・作曲・プロデュースを手がけたEXILE「Ti Amo」で第50回日本レコード大賞を受賞。NHK-FM「松尾潔のメロウな夜」(水曜23時〜)に出演中。

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