ビルボードライブスタイル

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Nights for Lovers


俳優・タレントとして活躍中の中尾彬さんと、エッセイストとしても活躍する池波志乃さんご夫婦。「ここで過ごす時間はすでに生活の一部となりつつある」というリピーターのお二人に、ビルボードライブの魅力とその楽しみ方をうかがいました。

ガラス越しに夕暮れを眺めながら、ワインと食事を楽しむ。

池波:ビルボードライブには平均して月に3回くらいうかがっていますね。
中尾:私が仕事で行けないときは友だちを誘ったりしているようだけど、ほとんど二人で来ていますね。
池波:ここは私が引き入れたんですよ。音楽の趣味が合うお友だちが二人いるので、彼が行けないときはそのどちらかを誘って。私はあまり大人数で来るのが好きじゃないので、ここはそうゆう意味でも最適。
中尾:席は決まっていつもDXシートカウンターだね。ここからステージ後方のガラス越しに刻々と変わってゆく夕暮れの風景を眺めるのがいいんですよ。私はその魅力にまず引き込まれたね。音楽に関しては志乃が詳しいので、彼女に任せていますが。
池波:私は昔からブラック・ミュージック一辺倒なんです。ビルボードライブはちょうど私の世代にとって懐かしいアーティストを呼んでくれるし、昔は生で聴く機会がなかった人たちがいま観られるのはうれしいですね。しかもゆったりした空間で、お料理とワインをいただきながら、という贅沢感が味わえる。そうじゃないと、一緒に来てくれませんから(笑)
中尾:志乃ひとりだったらいちばん前で踊ってるんだろうけど(笑)
池波:そうです。私ひとりなら最前列でもいいんです。4階のカウンター席で立って踊っているのは私だけです。
中尾:俺は他人みたいな顔してるけどね(笑)。俺はそれはできないから。
池波:美味しいワインが飲めないライブハウスには誘ってもつきあってくれないんですよ。
中尾:だから夫婦で来られるのはここだけなんです。

音楽を通して日常とは違う会話が弾む。

池波:いままで観たライブで印象に残ったアーティストはたくさんありますが、生で聴いて驚いたのはマーカス・ミラーかな。私がかつて好きだった往年のソウル/R&Bシンガーの方たち、チャカ・カーンやシェリル・リンにしても、年齢を重ねても素晴らしい歌を聴かせてくれるし。
中尾:日本のシンガーと何か違う芸の年輪を感じますね。私は彼らの若い頃は知らないけど、50代、60代でもまだ現役でパワーのあるステージを見せてくれるんだからたいしたものですね。
池波:私は懐かしさやノリで聴いてしまうことろがあるんだけど、彼に感想を聞くと、そういう見方や感じ方もあるんだな、と新鮮な発見があるんです。いい歳になって、ここにいる幸せを噛みしめつつ、音楽を通して日常とは違う会話ができる。
中尾:二人合わせて120歳超えて、楽しめるものがあるというのはいいね。私は絵を描いたり、いろんな趣味がありますが、音楽だけは意外に触れてこなかったんですよ。志乃の世代とはギャップもあるんですが、ここで彼女の好きな音楽のよさもわかるようになってきたね。
池波:私はある時期、仕事では着物でチントンシャンの世界にいましたけど、仕事が終わったらカーステレオでJB(ジェームス・ブラウン)を聴いてきた隠れR&B好きだったんです(笑)。それを解禁してから、中尾さんもライブにつきあってくれるようになって。
中尾:私は最初はワインと料理と眺めに惹かれて来たんだけど、何度も足を運ぶうちに客層の違いで音楽の中身がなんとなくわかるようになってきたね。シンガーによってこうも反応やムードが変わるものかと。JOEなんて色気があってよかったね。
池波:中尾さんのそういう反応も私には楽しくて、新しい相手とデートしているような気分になったり(笑)。熟年カップルにはおすすめです。

二人で豊かな時間を共有する充実感

中尾:音楽と美味しいお料理と酒。たしかに贅沢ではあるけど、こういう豊かな時間があるからこそ一所懸命働くんであってね。もっと歳をとってからとか、引退してからなんて言ってたら人生もったいないですよ。
池波:同じ時間を共有する充実感はなにものもにも代えられないですよ。
中尾:音楽の魅力はそこにあるんですよ。なくても生きてはいけるけれど、それじゃ生きている証拠がない。
池波:そう。心ゆくまで音楽を享受するのはレストランでおいしい食事をいただくのとは違う付加価値があるんですよね。
中尾:仕事のヒントになることもありますよ。観客に接するときの態度やサービス精神なんかは、言葉は分からなくても伝わりますから。
池波:私たちがくるのは決まって1stステージ。ここから見える大禍時の都会の借景が好きなのと、ワインでいい感じに温まってきたタイミングでステージが始まるあのワクワク感がたまらない。
中尾:志乃はこういう場所で好きなアーティストを観るのが憧れだったんでしょ?
池波:そう。日本ではこういう空間はなかったから。好きなアーティストが来日したらホールやアリーナにも行きますけど、ここはそれとは違う楽しみ方ができるでしょ。おかげで中尾さんと音楽の話ができるようになりました。
中尾:すみませんね、いままでは(笑)
池波:こちらで過ごす時間はいまではうちの生活の一部になりつつあります。
中尾:そうだね。私のスケジュールにはここで観たいライブが入れられているんですよ。


Akira and Shino

中尾彬

1942年生まれ。千葉県木更津市出身。俳優/タレント。武蔵野美術大学時代の62年に日活ニューフェイスに合格し、映画デビュー。映画、舞台、TVで活躍する傍ら絵画や陶芸の創作活動でも知られる。

池波志乃

東京都出身。父は10代目金原亭馬生、祖父は5代目古今亭志ん生という落語家一家に育ち、70年代から90年代にかけて女優として活躍。現在はエッセイスト、オフィスSHINO代表取締役

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